麻生研究室
機能性高分子材料工学
低エネルギーかつ長寿命で機能する環境調和型の次世代材料を開発します。
合成高分子や天然由来高分子を「組み立てる」アプローチで持続可能な社会に貢献する機能性マテリアルを創出します。低エネルギーかつ長寿命で機能する材料は環境調和型の次世代材料として魅力的です。低エネルギーで材料を機能させるには、わずかな温度やpH、ひずみなどの変化に応答する材料を設計します。材料へ靭性や自己修復性を付与することで、材料寿命を延ばしてごみの削減に貢献します。このような機能を持つ持続的社会に貢献する革新的なマテリアルを分子設計や構造設計をもとに、機能に応じた化学組成や配列を適切に制御することで創成します。分子レベルからマクロスケールまでの階層的なデザインによって、循環型社会に貢献できるマテリアル創成を推進します。
接着制御を基盤とした立体造形
ハイドロゲル三次元加工は、組織再生用足場材料やドラッグドラッグデリバリー担体、さらにはソフトアクチュエータとして精力的に研究されています。例えば生体は、微細構造のみばかりか、化学組成を含めて複雑な階層構造によって形成され機能しているソフトマテリアルです。その複雑な階層構造を再現するためには、我々は「分子設計されたハイドロゲルの部品」を逐次的に組み立てることで、テーラーメード型の三次元構造体を簡便に構築できると考えています。
Langmuir 2022
Mater. Chem. Front. 2017
Colloids Surf. B 2014
Chem. Commun. 2012
ハイドロゲルの電気泳動接着
ハイドロゲルの接着制御を目的として、電気泳動接着を開発しました。アニオン性ゲルを陰極側に、カチオン性ゲルを陽極側に設置して電場を印加すると 、二つのゲルは直ちに接着することを見出しました。反対電場を印加した際は、接着しません。このことから、電場印加に伴う高分子電解質の電気泳動がゲルの接着に寄与していることが示唆されます。電場印加によってカチオン性高分子は陰極側へ、アニオン性高分子は陽極側へそれぞれ移動しると考えられます。二つのゲル界面でポリイオンコンプレックスが形成された結果、ゲルは接着すると現在のところ結論付けています。本手法によれば導電性高分子ゲルも接着可能であり、また、イオン結合以外の分子間力にも適用可能であることがわかっています。
Macromol. Rapid Commun. 2020
J. Mater. Chem. B 2015
RSC Adv. 2013
Soft Matter 2012
Chem. Commun. 2010
リンクル構造を利用した機能性材料
自然界においては、表面や界面の形態がきわめて精密に制御されることで、様々な機能制御がなされています。そのなかで、リンクル構造は、弾性体表面に比較的硬い薄膜が形成して、横方向から圧縮変形することで座屈変形し、形成されます。自然界のソフトな界面、例えば、指先、脳、内臓などの生体組織や植物の表皮などに散見されるリンクル構造は、多くの現象に物理的境界条件として関わりますが、表面積を獲得する以外の役割はほとんどわかっていません。私たちは、独自の手法でハイドロゲル表面や界面にリンクル構造を形成する手法を開発し、その接着能や動的機能を明らかにする研究を実施しています。
Macromol Rapid Commun. 2022
Langmuir 2020
Macromol. Rapid Commun. 2019
Chem. Commun. 2019
J. Phys. Chem. B 2016
異方ゲルの開発とソフトアクチュエータ
刺激応答性ハイドロゲルは外部刺激に応答してその形状を大きくかえるため、水環境で駆動する人工筋肉として有望な材料です。私たちは、外部刺激に応答して湾曲するゲルの設計として勾配に着目しました。電気泳動堆積と光重合を組み合わせることで、ナノ構造勾配を持った有機無機ハイブリッドゲルと空孔密度勾配を持つゲルを作製しました。これら勾配ゲルは、異なるメカニズムによっていずれも温度に応答して大きく湾曲することがわかりました。また、温度応答性高分子ゲル内にpH応答性高分子の勾配を形成することにも成功しています。このような傾斜機能材料は、化学組成や物理的性質が連続して変化する材料であり、異なる機能を持つ材料を最も理想的に接合した材料ととらえることができます。
Chem. Commun. 2009
Adv. Mater. 2008
複合化による材料の機能化
二種類以上の材料を効果的に複合することで、単一の材料の能力をはるかに超えた新しい機能を付与することが可能であり、その組み合わせは無限にあるでしょう。私たちは、マトリクスとしての高分子材料と、フィラーとしての微粒子の合成と複合化を巧みに制御することで、稀有な機械物性を持つ複合材料を生みだしています。例えば、寸法安定性を維持しつつ外部刺激によって剛性や粘着能が変化するソフトマテリアルや切断部位が接触させるだけで元に戻る自己修復材料を開発しています。
Sci. Rep. 2020
J. Mater. Chem. B 2020
Chem. Commun. 2018
Macromol. Chem. Phys. 2013
研究費 (研究代表者として)
公的研究費 (科研費)
2019-2022年度 科学研究費補助金基盤研究B
2017-2018年度 科学研究費補助金若手研究B
2014-2015年度 科学研究費補助金挑戦的萌芽研究
2010-2011年度 科学研究費補助金若手研究B
2007-2008年度 科学研究費補助金特別研究員補助金
公的研究費 (科研費以外)
2020-2021年度 JOGMEC金属資源の生産技術に関する基礎研究
2019-2021年度 NEDO 新技術先導研究プログラム
2018-2020年度 ERCA 環境研究総合推進費 革新型研究開発
2014-2015年度 JSTテニュアトラック普及事業
民間研究費
2022-2023年度 精密測定技術振興財団研究助成
2020-2021年度 泉科学技術振興財団研究助成
2019-2022年度 小笠原科学技術振興財団研究助成
2019年度 池谷科学技術振興財団研究助成
2017-2018年度 旭硝子財団研究奨励
2016年度 双葉電子記念財団自然科学研究助成
2015年度 住友財団基礎科学研究助成
2015年度 笹川科学研究助成)
2012年度 財団法人イオン工学振興財団